トックリバチは、「ハチ目スズメバチ科ドロバチ亜科(科)」に分類されるハチです。
「ドロバチ」に含まれる蜂は世界で3500種類以上の個体が確認されており、日本では60種類以上の個体が確認されています。
今回は、よく見られるスズメバチやアシナガバチとはどういった違いがあるのか、トックリバチの巣の特徴や安全性についてご紹介していきたいと思います。
ここでは、日本で最もよく見られる「ミカドトックリバチ」の生態についてご紹介していきます。
家の周りで見かける蜂がどういった蜂なのか知りたいという方は、是非参考にしていただければと思います。
目次
トックリバチの見た目の特徴|他の蜂との違い
トックリバチは、見た目が「スズメバチ」のような特徴をしていますが、その生態や巣の作り方はまるで違います。
ここでは、その違いについて解説していきます。
体の特徴 | 性格 | エサ | 毒の有無 | 分布 | |
トックリバチ |
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蛾や蝶の幼虫 | 有(しびれさせる程度) | 寒帯地域除く本州・四国・九州に生息 |
スズメバチ(オオスズメバチ) |
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比較的獰猛で攻撃性が高い | 蛾や蝶の幼虫・大型の芋虫・(時には大型肉食昆虫を襲うことも) | 有(毒性が強く刺されるとアナフィラキシー症状がでる) | 全国に分布 |
アシナガバチ |
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比較的穏やか(巣や本体を刺激すると襲ってくる) | 青虫や芋虫 | 有(毒性が強く、刺されると鋭い痛みが走る・アナフィラキシー症状を引き起こす) | 北海道以外の全国に分布 |
ミツバチ |
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比較的穏やか(巣や本体を刺激すると襲ってくる) | 花蜜や花粉 | 有(毒性は弱いものの集団で刺されるとアナフィラキシー症状を起こす) | 北海道以外の全国に分布 |
毒性の強い蜂をと大きく違うのは、「トックリ」というように腰にある徳利のような細いくびれあることと、スズメバチに比べるとやや小さめであることが分かります。
毒性も弱く、比較的穏やかな性格をしていますが、毒性の強い他の蜂と見間違えて観察しようとするのはかえって危険です。
トックリバチなのかスズメバチなのか見分けがつかない場合は、専門業者に相談するようにしましょう。
トックリバチの巣の特徴と見分け方
トックリバチの巣はまたその名から「徳利」のような形をしていることが特徴ですが、形状が丸いのでスズメバチの巣と見間違えてしまうことがあります。
但し、材料や大きさなど異なる部分がありますので、ここでは他の蜂とどう違うのかご紹介していきます。
巣が作られる場所 | 巣の形状 | 巣の材料 | 巣の大きさ | |
トックリバチ |
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泥や土を唾液と練り合わせて作る | 1㎝~2㎝程度 |
スズメバチ |
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木の繊維と唾液を混ぜて作る | 初期は5㎝程度
完成期には50㎝以上にもなる |
アシナガバチ |
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木の繊維や土を唾液と混ぜて作る | 15㎝~20㎝程度 |
ミツバチ |
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「巣板」が何層にも重なっている | 花蜜と蜜蝋で作る | 最大で1mになることも |
他のハチと大きく違うのは、巣の材料が泥であることです。
ドロバチの多くは泥を使って巣を作ります。
ドロバチに分類されるトックリバチも例外でなく、泥を練り合わせて巣を作っていきます。
また、単独で行動するハチなので自分自身や幼虫が入れる程度の比較的小さな巣を形成します。
【危険!】トックリバチのような蜂の巣を作るハチ
しかし、毒性の強い蜂のなかにはトックリバチのように徳利のような巣を作るハチもいます。
そのため、徳利=トックリバチではない場合があるので、迂闊に判断するのはあまり得策ではありません。
ここでは徳利のような巣の形をしている危険な蜂をご紹介していきます。
コガタスズメバチ
コガタスズメバチはオオスズメバチに似ている外見を持つ蜂です。
大きさはオオスズメバチより一回り小さなハチですが、比較的大型のハチとされています。
オオスズメバチと比べると比較的温厚で大人しい性格をしていますが、毒性も強いことが特徴です。
5月ごろまでは徳利を逆さまにしたような形状をしていますが、6月に入り、働き蜂が羽化すると徳利の先端部分をかじり取り、更に大きくしていきます。
その後、マーブル模様の30㎝程度の球体へと巣を大きくしていきます。
庭木や生垣、軒下などとりわけ低くく、開放的な空間に作るためうっかり巣を刺激して刺されてしまう危険性があります。
初期に作られる巣はトックリバチのような巣の形をしているので、特に対策もなく巣を駆除するのはかえって危険ですので、見分けられない場合はそっと離れて専門業者に相談するようにしましょう。
ツマグロスズメバチ
ツマグロスズメバチは主に沖縄に生息している大型のハチです。
体全体が茶褐色で、腹部が黒と黄色のツートンで分かれている模様が特徴です。
比較的温厚で大人しい性格とされていますが、巣やハチを刺激すると襲ってきます。
刺されるとアナフィラキシーショックを起こすほど毒性が強いだけでなく、仲間を呼ぶ際に毒をまき散らす習性があるのでうっかり毒が目に入ってしまうと失明する恐れがあります。
1m程度の低い位置で巣を作ることが多いので、庭作業をしていてうっかり巣を刺激して刺されるといったこともあります。
ツマグロスズメバチの巣もコガタスズメバチのように初期はトックリをひっくり返したような形をしており、徐々に球体へと変化していきます。
ツマグロスズメバチもまた危険な蜂の一種であるため、トックリバチのような形をしているからと安易に巣を駆除したらツマグロスズメバチの巣である可能性があるので、巣の形状からどのような蜂なのか判断できない場合は専門業者に相談するようにしましょう。
トックリバチの活動時期
トックリバチは6月~10月にかけて営巣し、冬を越すためのエサを巣にためこんでいきます。
秋の終わりごろになると、トックリバチは巣に一つ卵を産み付けます。
卵を産んだ親バチは子どもを置いて他の場所へと飛び立っていき、幼虫のお世話はしません。
冬の間、トックリバチの幼虫は親バチが入れておいた蛾や蝶の幼虫を食べ、成長していきます。
春先にトックリバチの幼虫は成虫へと成長し、活動をし始めます。
このようにトックリバチは一生を単独で過ごしていくので、群れで暮らすスズメバチやアシナガバチとは異なる活動サイクルであることが分かります。
トックリバチの駆除方法
トックリバチは、毒性も弱く、こちらが刺激をしない限り襲ってくることがないため、早急に駆除しなければならないほど危険な蜂ではありません。
但し、毒性が低いといっても刺されれば腫れたり痛みを伴う可能性はありますので、駆除をするのであれば親バチが旅立った冬の間に駆除するようにしましょう。
親バチが旅立ったと思ったらまた巣に幼虫を運んでくるときもあるので、刺されないよう自分たちで駆除する際は十分に準備をしてから駆除を行いましょう。
【関連記事】『自分で蜂の巣は駆除できる?安全にできる駆除方法と注意点』
場合によっては「トックリバチの巣に似ているけどコガタスズメバチやツマグロスズメバチの巣かもしれない」といった危険性のあるハチかどうか分からないときは自分たちで駆除せず、一度専門業者に見てもらうようにするようにしましょう。
また、トックリバチの巣の中にはトックリバチが捕まえた青虫や芋虫があるのでむやみに巣を壊すと、中から幼虫がワッと出てくる可能性もあるので、苦手な方は専門業者に駆除するか相談するようにすることをおすすめします。
「益虫」の役割を持つトックリバチ
トックリバチは、様々な種類の青虫や芋虫を食べてくれるので野菜などを育てている方ガーデニングをしている方にとってはむしろ「益虫」であることがあります。
庭先でトックリバチを見つけた際、益虫としての役割が必要な方はむやみに駆除をしなくてもよいのではないかと思います。
トックリバチに巣を作らせない予防方法
トックリバチに巣を作らせないようにするためには、トックリバチが活動をし始める6月に入る前に巣作り防止のスプレーや薬剤を巣が作られる場所に定期的に撒くようにしましょう。
また、作られやすい場所に蜂が苦手な水を撒いておくのも効果的です。
基本的には、他のハチと同じような方法で巣が作られる可能性を低くすることができますので、是非下記の記事を参考にしていただければと思います。
【関連記事】『蜂の巣を作らせない!効果的な予防・対策まとめ』
【関連記事】『蜂の巣種類とその簡単な見分け方!発見した際の対処法についても』
トックリバチの巣を駆除しようか迷ったら専門業者に依頼しよう
トックリバチは比較的大人しい性格で巣を刺激しなければめったに人を襲うことはしません。
毒性も弱いですが、刺される痛みや場合によっては腫れる可能性があります。
また、コガタスズメバチやツマグロスズメバチのような危険性の高い蜂の巣と同じような形状をしているので、トックリバチの巣だからとそのまま放置していたらスズメバチの巣だったということもあります。
親バチが旅立った冬の間であれば自分たちで駆除することが可能ですが、他のハチの巣と見分けられないとき、キレイに巣を撤去したい場合は専門業者に依頼するようにしましょう。
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